Arrival199/アライバル[Sofa]

帰ってきた夜、ソファに沈む

冬の夜、家族は長い旅行から戻ってきたばかりだった。
玄関にはまだキャリーケースがいくつも並び、靴も脱ぎ散らかしたまま。
旅先で買ったお土産の袋からは異国の甘い香りが漂い、家の中には慌ただしさと心地よい疲労感が入り混じっていた。

自然と足が向かったのは、旅行前に届いたばかりのソファ。

ふっくらと丸みのあるフォルムは、まるで大きな雲の塊のよう。
低めの座面と奥行きの深さが身体をゆったりと受け止め、旅で凝り固まった背中や足をじんわりとほぐしていく。
子どもは毛布を抱え込み、ソファに横たわると数分もしないうちに小さな寝息を立て始めた。

ソファの背にもたれ込み、外の冷気がまだ頬に残っているのを感じながら大きく息を吐いた。

ソファに並んだ家族の姿は旅行以上に豊かな時間を映しているようだった。

窓の外では、ちょうど雪がちらちらと舞い始めていた。
白い粒が街灯の光に照らされ、静かなリズムで落ちていく。
その景色とソファのやわらかな温もりが混ざり合い、リビングはまるで「おかえりなさい」と告げているかのように感じられた。

家具は暮らしの背景ではなく、旅の終わりに帰り着く場所でもある。
ソファは、その夜家族の「帰ってきた」という安心と幸せを、やさしく、深く包み込んでいた。