バタフライスツール | albo(アルボ)

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Furniture Guide / 家具ガイド

バタフライスツール

日本から世界へ羽ばたいた名作家具


ひとつの家具が、日本のデザイン史を変えることがあります。

1956年に誕生した「バタフライスツール」は、まさにその象徴です。蝶が羽を広げたような美しいフォルムは、今なお世界中の人々を魅了し続けています。

日本人デザイナー柳宗理の手によって生まれ、天童木工の革新的な「成形合板技術」によって実現したこの椅子は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品に選ばれ、国際的に高い評価を受けました。

バタフライスツールは、単なる椅子という枠を超え、「日本の美意識」と「職人技」が融合した芸術作品であり、そして暮らしの小さな時間を支える存在です。

デザインの背景 ─ 柳宗理と天童木工の出会い

柳宗理(1915–2011)は、日本を代表する工業デザイナー。

「使いやすさと美しさは一体である」という思想のもと、カトラリーや鍋、日用品から家具まで幅広いデザインを手掛けました。彼のデザインは「意識せずとも生活に馴染む」ことを大切にしており、奇抜さよりも自然さを重視しました。

一方、山形県天童市に本拠を置く「天童木工」は、戦後間もない時代に新しい技術「成形合板」を取り入れ、日本の家具づくりを革新したメーカーです。成形合板とは、薄い木の板を何枚も重ねて圧着し、曲線や強度を自在にコントロールする技術。従来の木工では不可能だった形を実現できる画期的な方法でした。

この二者が出会い、柳宗理のアイデアを形にしたのが「バタフライスツール」。日本のデザインと技術が融合した瞬間でした。

デザインの特徴 ─ 二枚の羽が重なり合う構造

バタフライスツールは、一見すると驚くほどシンプルです。

二枚の成形合板を左右対称に組み合わせ、真ん中を真鍮の金具で留めただけ。しかし、その姿はまるで蝶が羽ばたく直前の瞬間のように、軽やかで優美です。

座面はゆるやかにカーブしており、腰をかけたときに自然と体に馴染む設計。高さは低めで、長時間座る椅子ではなく「短い時間に寄り添う椅子」としてデザインされています。

また、椅子としてだけでなく、玄関や寝室に置けばオブジェのように空間を彩り、サイドテーブル代わりにもなる汎用性を持っています。シンプルな構造ゆえに「用途を限定しない自由さ」があり、それこそが柳宗理の思想を体現していると言えるでしょう。

職人技 ─ 成形合板が生んだ美しい曲線

成形合板の技術は、当時の日本においてまだ新しいものでした。

複雑な曲線を描きつつ、強度を確保し、なおかつ木の質感を美しく残す。これは簡単なことではありません。

天童木工の職人たちは、木目の流れや板の厚みを調整しながら、繊細なカーブを作り上げました。温度や湿度によって変化する木材の特性を読み取り、何度も試作を重ね、ようやく理想の形にたどり着いたのです。

バタフライスツールの優美なラインは、デザイナーの発想だけでなく、職人の経験と技術があってこそ生まれたものでした。

暮らしのシーン ─ 小さな時間を支える器

バタフライスツールは、日常の中で特別な存在感を放ちます。

  • 玄関に置いて
     靴を履くときにちょっと腰掛ける椅子として。訪れる人にとっても「おもてなしの一脚」になる。
  • 寝室に置いて
     ベッドサイドに置けば、夜に読みかけの本や眼鏡、グラスをそっと置く台に。暮らしのリズムをやさしく整える。
  • リビングに置いて
     ソファの横に置けば、コーヒーカップを片手に過ごす午後のひとときに寄り添う。

使う人の生活に応じて、椅子であり、台であり、オブジェでもある──。この多面的な魅力こそが、バタフライスツールを「日常に馴染む芸術」にしています。

世界に広がる評価

バタフライスツールは誕生以来、数多くのデザイン賞を受賞し、世界の美術館に収蔵されています。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ルーブル装飾美術館など、名だたる場所で展示され、日本のデザインを象徴する存在となりました。

海外の建築家やデザイナーにとっても、この椅子は「日本らしさ」を体現するアイコンです。装飾を削ぎ落とし、機能と美しさを融合させた姿は、禅の精神や「用の美」に通じるものとして受け止められています。

柳宗理というデザイナー

柳宗理は、単なるデザインのためのデザインを嫌いました。

「美しい形は機能から生まれる」という信念のもと、鍋やカトラリー、椅子など、誰もが日常で使うものを丁寧にデザインしました。

彼のデザインした「柳宗理のカトラリー」は今なお世界中で愛され、料理人や家庭に広く浸透しています。そこには「派手ではないが、長く使うほどに魅力が増す」という思想が一貫しています。

バタフライスツールもまた、その延長線上にある作品です。目立たず、しかし確かに生活に豊かさを添える。それが柳宗理の目指したデザインでした。

alboの視点から ─ 思い出を刻む家具として

alboは「家具は人生の1ページを残す器である」と考えています。

その視点で見ると、バタフライスツールは、まさに象徴的な家具です。

例えば、子どもが玄関で靴を履くときに腰掛ける姿。

例えば、夜に寝室で一息つきながら、本を閉じてスツールに置く瞬間。

例えば、休日の午後に、コーヒーを飲みながら静かに流れる時間。

そんな日常の小さなシーンを、この椅子は美しく切り取ってくれます。

「いつの間にかそこにあって、思い出の背景になっている」──それこそがalboが大切にしたい家具の姿です。

まとめ ─ 日本から世界へ羽ばたいた椅子

バタフライスツールは、日本のデザインと職人技が融合した傑作。

それは単なる椅子ではなく、暮らしの小さな時間に寄り添い、未来の記憶を刻んでいく存在です。

蝶のように軽やかでありながら、確かな強さを持つこの椅子は、日本から世界へ羽ばたいたデザインの象徴。

そしてこれからも、多くの人の暮らしを静かに彩り続けることでしょう。

画像引用元:天童木工公式サイト(https://www.tendo-mokko.co.jp/

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