
やっと、何もない日曜日が来た。
引っ越してからしばらくは、手続きや買い出しでバタバタしていて、
「この家に住んでいる」という実感すら、どこかぼんやりしていた。
でも今日は予定もない、3人だけの休日。
午前中は、近所のパン屋さんまで散歩して、
買ってきたクロワッサンとコーヒーを
新しいガラスのテーブルにそっと並べる。

「このテーブル、選んでよかったね」
そう言うと、夫はいつものように、
「うん、君が選んだのが正解だったと思うよ」と笑う。
私の中にはいつも、“好き”と“迷い”が同居していて、
「こっちかな?」「でもあっちも…」と、選ぶのに時間がかかる。
そんな私を責めず、いつも横で「いいと思うよ」と言ってくれるのが、夫だ。
新しいソファに、3人で並んで座る。
息子は、まだちいさな身体をもこもこのラグにうずめてゴロゴロ。
その姿を見ながら、私も夫も同時に、
ふっと深く息をついた。
ああ、ようやく落ち着いたんだな。
この部屋に、暮らしが根を張りはじめてる。
大きな出来事はなにもない。
でも、この午後の光景が、
あとから思い出す“はじまりの一日”になる気がした。

家具を置いて、光が差して、人が笑ったとき、
そこは“部屋”から“わが家”になる。
家族の何気ない一日が、その証になる。