お客様が選ばなかった理由
販売員時代の話。
あるご夫婦がご相談にいらっしゃいました。
お子さんが小学校に入学するタイミングで「新しい暮らしを整えたい」とのことで、ダイニングテーブルを探していられました。

ご案内したのは、オーク無垢材を使った存在感のあるテーブル。
木目が美しく、長年使い込むことで味わいが増す
家具としては間違いなくおすすめできる一台でした。
ご夫婦も一目で気に入ってくださり、「これなら家族の時間を大切にできそう」と話されていました。
しかし、打ち合わせの中でお聞きした「数年後に引っ越しを考えている」という言葉が、私の中にずっと残っていました。
今のお住まいは3LDKのマンション。ご家族が成長していくにつれて、もっと広い家に住み替える計画があるとのことでした。

“今この瞬間”だけで決めない
家具は一度選べば、10年、20年と暮らしに寄り添う存在になります。
だからこそ「今の住まいに合うか」だけでなく、「これからの暮らしにどう影響するか」を考えなければなりません。
今のマンションにこのテーブルを置けば、確かに素敵な時間が流れるでしょう。
けれど、数年後に引っ越したとき、そのテーブルは新しい空間に大きすぎるかもしれない。
あるいは、家の雰囲気と合わなくなるかもしれない。
家具を扱う者として、そして「暮らしに寄り添う」という想いを持つ者として、私はお伝えしました。
「このテーブルは本当に素敵です。でも、数年後のお引越しを考えると、今選ぶよりも“新しい住まいに移られてから”の方が、より納得して使っていただけるかもしれません。」

“買わない選択”を一緒に考える
その言葉に、ご夫婦は少し驚いた表情をされました。
家具屋が「今はやめておきましょう」と言うなんて、あまりないことかもしれません。
でも、私は目の前のお客様が「後悔しない選択をする」ことの方が大切だと思っています。
家具は毎日触れるものであり、暮らしの記憶を刻む存在です。
だからこそ「勢いで買ったけれど、数年後には合わなくなってしまった」という後悔を残したくないのです。
ご夫婦はしばらく考えて、「確かに、引っ越した後の方が安心ですね」と笑顔で納得されました。
「買わない」ことを選んだのに、むしろ肩の荷が下りたような、晴れやかな表情だったのが印象的でした。

“売らない日”も大切な仕事
家具屋としては、その日売上にはつながりませんでした。
けれど、私にとっては大切な仕事ができた日だと感じています。
「買わなかった理由」をお客様と一緒に見つけること。
それもまた、誠実な接客のひとつだからです。
家具を売ることがゴールではなく、
「暮らしを豊かにする選択を支える」
だから私は、売らなかった日も胸を張って「良い仕事をした」と思えるのです。
未来を一緒に描く
家具はいつも、人生の節目に寄り添っています。
入学、就職、結婚、出産、引っ越し…。
人が新しい一歩を踏み出すたびに、その場には必ず家具があります。
だからこそ「今、この瞬間に買うことが正解かどうか」を一緒に考えることは、とても大切です。
家具は、未来の景色とつながっている。
お客様が選ばなかった理由を共に見つけ、その先の暮らしを想像する──。
それこそが、私たちalboが大切にしている姿勢なのです。

家具は単なる「モノ」ではなく、人生の節目や日常の記憶を形に残す存在です。
だからこそalboは、「今日売れるかどうか」ではなく、「お客様の未来にふさわしい選択かどうか」を大切にしています。
たとえその場で選ばれなかったとしても。
「この家具に出会えてよかった」と思える瞬間を、未来の暮らしの中で迎えていただけること。
それが、私たちの願いであり、使命です。
“思い出を大切にするなら、alboで。”
この言葉を胸に、これからも誠実に、ひとつひとつの暮らしに寄り添っていきたいと思います。

